産総研・日立の移動体データ形式「MF-JSON形式」が地理空間情報の国際標準として採択 |
[ ITS/CASE&MaaS ] 2020年6月10日 |
-移動体データの流通を円滑化し、混雑緩和や災害時の効率的な避難誘導に貢献-
ポイント
•3次元形状の物体の移動データを簡潔に記述するMF-JSON形式を開発
•地理空間情報の標準化団体OGCが移動体データ形式の国際標準として採択
•人や自動車など様々な移動体の動的な空間情報を一体的に記録し、移動データの流通促進に貢献
概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」)人工知能研究センターと株式会社 日立製作所(以下「日立」)は、人や自動車などの移動体の位置情報の時間変化を表すOGC Moving Features Encodingを拡張した新たな移動体データ形式「Moving Features Encoding Extension - JSON(MF-JSON形式)」を、地理空間情報の国際標準化団体Open Geospatial Consortium(OGC)に共同で提案し、国際標準仕様として採択された。
自動運転や防災、公衆衛生対策などでは、人や自動車などの移動データを流通・共有することの重要性が広く認められているものの、統一的なデータ形式がなかったため、異なるシステム間での円滑なデータ連携を図る方法が求められていた。これまで産総研と日立は、移動体の位置情報の流通・利活用を促進するための標準化活動をOGCにおいて推進してきた。今回、既存のOGCデータ交換形式の問題点を改善し、より簡潔に記述できウェブ環境で利用しやすいデータ形式「JSON」を用いたMF-JSON形式を提案し、OGCの国際標準仕様として2020年2月に採択、6月に公開された。本MF-JSON形式により、GPSからの人流データ(点形状)や、道路交通渋滞情報(線形式)、洪水浸水区域の拡大(面形状)、自動車の走行(立体形状)などの動的な地理空間情報が記述できる。多様な移動体情報をより高精度に共有できるため、さまざまな業界における人やモノの移動データの普及や利活用拡大が期待される。
開発の社会的背景
通信技術やGPSなどの測位を始めとするセンサー技術の発展に伴い、人やモノといった移動体の時間によって変化する位置情報(移動データ)の収集が容易になった。こうした移動データを共有・利用することで、人々の移動状況や密接度などの時間的・空間的な分析に即したマイクロマーケティングや、ロボットを利用した災害時の効率的な避難誘導、細街路を活用する超小型車両交通システムなど新たなサービスへの応用が期待されている。しかし、従来、移動データの標準的な交換形式がなかったため、それぞれのシステムが異なるデータ形式を使用しており、システム間の相互連携に問題があった。国際標準化機構ISO(International Organization for Standardization)による移動体を対象にしたデータに関する国際標準規格はあるものの、抽象的なデータモデルであり実用的なデータ交換に必要なデータ形式は提供されていなかった。
研究の経緯
産総研は、2016年から日立などが提案し設立したOGCのMoving Features Standards Working Groupに参加し、移動データに関する国際標準仕様の開発に取り組んできた
なお、本研究開発は、その一部が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究「次世代ロボット中核技術開発/次世代人工知能技術分野/人間と相互理解できる次世代人工知能技術の研究開発」にて行われた。