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自動車のメガトレンドと企業文化

[ Editor’s Column トヨタ ]

 クルマのメガトレンドとして、技術的には「知能化、電動化、ネットワーク化、モジュール化等」が挙げられ社会的には「所有から利用、インフラ産業化、保険や物流を含むサプライチェーンの激変」等が挙げられている。
自動車の主な価値は「移動、体感、保有」であるといわれる。高度成長期のモータリゼーション勃興期には新3Cの一つであったクルマの価値は、「移動=モビリティ」と同じく保有や運転する楽しみ=「体感」価値の比重は高かった。中国や東南アジアの新興国ではこの傾向は続いているが、欧米や日本では車社会=車文化の成熟によりこの価値は変化して本来の「移動価値」のウエイトが大きい。

 Ford創業家のBill Ford会長は、今年のCES(Consumer Technology Association)の展示会で、遠隔操作技術、カーシェアリングシステム「Go Drive」、自動運転カーなどを、Amazonと提携して開発すると発表し、自動車メーカーとしても、[モビリティ関連企業]への転身を、新たに模索していることを表明した。
トヨタは、昨年10月31日「モビリティサービス・プラットフォーム」構築を発表するとともに、「年間数百万台のクルマを作っている会社ではなく、顧客や社会との接点を、毎年数百万の規模で世界中に創出する会社になる」と発言している。これは、既存の移動手段の供給者から新たなパラダイムに向けたメッセージとも言える。

 将来のモビリティサービス産業を「MaaS」として整理して見せたのが英国のCATPULT社(運輸技術開発法人)である。同社は、昨年のITS世界会議メルボルンで以下のように整理している。Maas01.jpg

 1. "MaaS"とは「デジタル情報をベースに交通関連サービスを提供し、顧客(人及び物)のモビリティ(知的移動)の要件を満たすこと。
「個別の交通システムの所有やマネジメントではなく、ユーザーに対し、より魅力のある交通の仕組みと使い方を創造し、新たなモビリティサービスを提供すべきである。そのために要求されることは、移動における不快さを改善し、オンデマンドで最善な交通機関が選択でき、顧客のライフスタイルを価値あるものにすることに応えられるようにすることである。」
要は、電子情報サービスを使用して、モビリティへの要求に応えるサービスの総称と言える。
 2. 交通サービス利用者と既存の交通サービス提供者の間に「MaaSプロバイダーとデータプロバイダー」が参入し、新しいビジネスが発生することを想定していること。
言い換えると、既存の仕組みでは、ユーザーが求めるモビリティサービスの実現が難しいことから、「MaaSプロバイダーとデータプロバイダー」が、新たな役割を担うことになる。
その関係を図示したのが右図である。この2つ目の観点が、定義の中でも一番の特色と言えるであろう。
 3"MaaS"により、渋滞や不便など従来のモビリティに対し、隘路の除去、選択肢の拡大、ライフスタイルの改善をもたらすこと。
つまり、MaaSが展開されることにより、今後のトレンドとしては、各種のネットワークが統合され交通の多様化が進み、自動車をシェアする仕組みの普及が促進されることになる。その結果、自動車の保有が減少し自分で運転することも減少することになる。それに併せ、自動運転が普及することにもなるとしている。

 また、MaaSに繋がるスマホなどのモバイルによる予約システムや支払いシステム、ルートや移動手段の選択等の付加価値を持ったサービスの提供により、交通の効率化が実現するとしている。そのためには、時間的にも経済的にも優しく、利用の楽しさを伴う、ユーザニーズに沿った、誰もが分かり易い移動の仕組み(コンセプト)が必要であるともしていた。

 さらに、上記のITS世界会議では、米Cubic社がMaaSのアウトカムとして、以下の9項目を挙げていた。
 1.すべての人が利用できるマルチな交通による移動
 2.既存インフラの最適化
 3.渋滞の軽減化
 4.大気汚染の軽減化
 5.インフラのより良い計画
 6.多くの人への個人的アドバイス
 7.家族にとっても個人にとっても最適な解
 8.高齢者にとっても障害者にとっても複数の選択
 9.全ての移動者にとって利便性の改善

 インターネットの世界では、ソフトウエアの必要な機能を、必要な時に必要な分だけサービスとして利用できるようにした"SaaS"(Software as a Service)という言葉があるが、"MaaS"はモビリティにおける"SaaS"とも言えよう。これにより従来から言われてきたようにクルマはマルチモダルの一つであり、IoTの一つとなることがさらに鮮明になる。

 果たして先に引用紹介したフォードやトヨタ(右下図)は上記のようなMaaSのビジネスコンセプトを容認しているのであろうか?toyotamobilityservise01.jpg
最近の両社のベンチャー企業への相次ぐ出資を見ているとIR対策だけでなく、またトヨタは、BR MaaS事業室を新設するなど少なくともトレンドは重視していると思われる。しかし、「付加価値」のMaaSプロバイダーへの移動説、「単体売り切りのビジネス」からの転換は「現行ビジネスの成功体験」があるだけに容易ではない。

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