自動運転車の「利用シーン」 |
[ Editor’s Column 自動運転 ] 2017年8月 3日 |
いろいろな政策や対策が検討されるとき必ず出てくる話題のひとつは「当該政策による具体的利用・実現シーン」である。そこで最近、関係者は、この点についても努力している。
内閣府の「未来投資戦略2017」では「Society 5.0」(*)での戦略分野5分野の一つに「移動革命の実現」(*)を上げ利用シーンを提案している。
(*)現代の社会を①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会に続く、人類史上5番目の新しい社会を「Society 5.0」としている。
(*)5分野
1.健康寿命の延伸, 2.移動革命の実現 3.サプライチェーンの次世代化,4.快適なインフラ・まちづくり,
5.FinTech
「移動革命が実現」された後の生活・現場のワンシーンは以下のようなものである。
・(物流現場)
e コマースの進展に伴い、物品取引が飛躍的に増大して、ドライバー不足と長時間労働に直面する中でも、一人のドライバーが行うトラックの隊列 走行によって大量の貨物が輸送可能となる一方、ドローンを活用した個別配送が一般化することによって、大きな負担なく物流事業が継続でき、消費者ニーズに沿った新たな配送サービスが日々生み出されている。
・(発送・受取)
四国の離島から北海道に暮らす友人に荷物を発送。自動運航船による運搬、トラックの隊列走行、無人自動走行、ドローンなどロボット技術の活用による個別配送の連携で、真冬でも迅速・安価に、安全・安心に荷物が到達。
・(高齢者・家族)
鉄道や路線バスが廃線となり、仲間との囲碁の会や買い物・通院に車を使用していた高齢者が、心配する家族から運転を控えるよう勧められていた。県道を走る自動走行バスと道の駅からの移動サービスが導入され、住み慣れた土地で、家族に心配をかけずに暮らし、外出も続けられている。
インターネットやスマホが市場に出てきた時に「利用シーン」が議論されたか?技術やシステムが紹介され、事業者がサービスを提供し、市場を掘り起こしている。
事実、利用者に何が欲しいか聞いても良くわからない。従い「利用シーン」を提示することは実は「既存知識からの単純な直線回帰」に過ぎないおそれは大きい。また、余り早い段階で利用シーンを鮮明にすることは、議論の幅を狭め、議論を誘導する恐れもある。
紹介されている「利用シーン」は,経産省等の「自動走行ビジネス検討会」に依るところが大きい。
しかし、そのような懸念を差し引いても総じて言えば評価すべき傾向でり、自動運転社会実現のための「一つのプロセス」と言える。