ITS世界会議等におけるMaaSの議論 |
2017年12月11日 |
MaaS(Mobility as a Service)について関心が高まっている。
一言でいえば、マルチモーダルサービス(Multimodal service )を、スマホなどのアプリで課金も含めてone stopで提供するサービスのことである。
マルチモーダルサービスは長年言われてきたことであり、目新しいことではないが、最近のデジタル通信技術、ビッグデータ処理能力、データの公開・共有化、IoT、の発展によりニッチからメインストリームになる可能性もある。
データ公開・共有化、個人情報に関する規制緩和とともに、全体の仕組みをビジネスとして纏めるプラットフォーマーの出現も想定されている。現在の各交通事業者やカーメーカーなど個通交通手段提供者は、このプラットフォーマーの傘下に入り主体性はなくなるというシンクタンクの調査レポートもある。そうなると自動車産業にも大きな影響を与える。
さらに最近の所有から利用への意識の変化、自動運転化がこの動きを加速させると考えられる。
▼自動運転で先行している建機業界では、マルチモーダルとは言えないが、工事現場での各機器のコントロール・管理について新しい事業ニーズがある。例えば、コマツは機器提供からサービス全体の事業者への転身に着手している。
▼自動車業界の危機感も強い。<トヨタの戦略>>
例えば、トヨタグルーのデンソー、あいおいニッセイ同和損保・トヨタファイナンシャルサービスはフィンランドのスタートアップ企業MaaS Global社に出資した。
また、トヨタは社内にMaaS検討組織を立ち上げてビジネスの可能性について検討している。昨年のお台場でのSIP ADUSの国際workshopではフィンランドのAnne Berner運輸通信大臣が来日して、スタートアップ企業との連携、日本企業による実証実験誘致などのプロモーションを含めて活動を紹介した。
今年10月、カナダモントリオールで開催されたITS世界会議でも、MaaSは昨年に続き注目テーマであった。SIS04セッションで登壇したオーストリアASFINAG Maut Service社はMaaSの必要構成要素として顧客管理、プライシングなど4項目を挙げていたが(右下図)、その中でDATAマネジメントが最も重要かつ難しいと思われる。また、TS01セッションではフィンランドのVIT Technical Reserch Centre社が都市部、郊外など地理的条件の異なる領域でのサービスの特性について報告があったが、共通のバックグランドとしてシェアリングエコノミーが挙げられている。
また、SIS32では MaaS: roadmap to the future of mobility というテーマで議論された。欧州ではMaaSアライアンスを発足させ、MaaSのロードマップを策定し共通のアプローチで検討している。
自家用自動車の稼働率は4%に過ぎない。これがシェアリングに移行するとMaaS市場は従来の公共交通中心のマルチモーダルの施策を一変させる。ユーザーサイドとすれば、このサービスが便利で廉価ならば利用する。クルマ文化の成熟した社会での事業性はどの程度あるか?今後も予断を持たずにフォローする。