交通ビッグデータの活用 ①MaaS |
[ Editor’s Column 自動運転 ] 2018年5月28日 |
◆ビッグデータの活用による社会課題の解決やビジネスチャンスの発掘についての議論が盛んである。交通や自動車(*)の分野でも、活用検討が行われ、一部はすでに実装・活用の段階である。
▼ビッグデータの定義についてはあいまいであるが、東工大 福田准教授の講演を要約 引用する。
(*)自動車関連情報の利活用に関する将来ビジョン(H27年1月)
(*) jICE REPORT(第28号)
ビッグデータとは、管理するのが困難な大量のデータ群を指す。
最近のビッグデータを特徴づける要素として、Volume(量)、Variety(多様性)、Velocity(速さ)、の3つの頭文字をとって、「3V」と言われる。収集されたビッグデータは、継続的、半永久的に収集できるデータ群と考えられる。
▼自動運転など「CASE=ケース」の進展により、新しい交通サービス、交通のビジネスモデルとして議論されているMaaS(Mobility as a service)もその"肝"になるのは、ビッグデータである。
※CASEは4つのキーワードの頭文字をとったもの。コネクティビティ(接続性)の「C」、オートノマス(自動運転)の「A」、シェアード(共有)の「S」、エレクトリック(電動化)の「E」
◆筆者は、MaaSとは、「ITとビッグデータを活用した"トリップ起終点"最適交通手段組み合わせサービス=Multi-Modal Service」であると整理している。長年、交通政策や研究分野で提唱されてきた「Multi‐Modal Service」が最近のIT技術を活用して、新しいビジネスに変貌するのではないかという期待である。
◆GM、VW、トヨタなど世界の自動車メーカトップが「モビリティサービス企業」への変身を標榜している。「クルマの単体売り切り型のサプライチェーンから交通サービス」も視野に入れたビジネスに変身するということである。「所有から利用」「モビリティ産業」などキーワードは踊るが、具体的なイメージまでは発信していない。論者の中には、MaaSのプラットフォーマーが一つの形と考えている。
◆当然の関心事は、本サービスの市場規模と社会的課題解決である。
市場規模だけでみると、交通産業自体の規模は、旅客・貨物両方を合わせても自動車産業に遠く及ばない。公共交通というくくりで見ると、一部幹線交通を除き経営的には楽ではない。現状での市場規模やビジネスでなく新しい切り口が不可欠である。
新しい切り口という観点からは、アマゾンやアリババが、ネットを利用したリテールの物販、グーグルや百度のネットによる検索と広告を結び付けたビジネスモデル、いずれもITを活用しているのが参考になる。
物販も広告も新しい概念ではない。しかし両者とも、ITとの融合により新しい領域を生み出し拡大している。
◆交通スマートカード、カーシェアリングアプリ、交通位置情報、プローブ情報などが実用化されている。いわば、個々のサブインフラが育ちつつある。フィンランドでは国を挙げて取り組んでおり、EUではアライアンスも誕生している。
さらに、自動運転により、タクシーの料金は劇的に下がるというレポートもある。各地で行われている無人運転バスサービス実験も現在の公共交通のビジネスモデルを一変させ、需要が創造される可能性がある。
しかし、ビッグデータは各サブシステムにとって貴重な資産である。コストもかかっている。データのフォーマットにそれぞれの主体の設計思想が組み込まれており、標準化は難しい。さらに最近はプライバシーという評価軸が加わり、国家戦略の重要機能の一つともなっている。
いわゆるMaaSプラットフォーマーが、これらサブシステムのビッグデータを統合して運用するサービス事業者になれるかどうか容易ではない。