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スマートシティの論点 その2-Not PoC(Proof of Concept)-

[ Editor’s Column MaaS イベント情報 ]

1月19日(火)、(一般社団法人)スマートシティ・インスティテュート主催による スマートシティに関するWebセミナーがライブ中継された。(無観客開催)
このウエビナーは昨年6月29日 行われた「Sipスマートシティ・アークテクチャー」の第2弾でタイトル:「日本型デジタル社会実現に向けたオール・ジャパンサミット」スマートシティシンポ.jpg
(10:00~18:10休憩なしの長時間開催であったが約半数聴講した。)

●セミナーは、平井 卓也 デジタル改革担当大臣、河野 太郎 規制改革担当大臣の挨拶に続いて、片山 さつき 元地方創生・規制改革 担当大臣・主催者代表、との特別対談の後、「共通データ交換基盤の導入と実践に向けて」、「スマートシティにおける市民参加」、「経済界の取り組み」、「国際連携」、「アーキテクチャー」、「スマートシティの最終目的としてWell-Being」、について意見交換した。

●テーマ設定、登壇者、内容、ともに良く練られたものであった。
全体感として、スマートシティ構築は「大変チャレンジング」なプロジェクトだということを再認識した。
特に推進に当たり「ボトムアップ型の推進=市民参加」と最終目的としての「well-Being」が取り上げられたことが印象に残る。

前稿でもふれたが、スマートシティプロジェクト推進の肝は、「データ活用」による生活・社会課題の改善・効率化である。そのためには、中国のような政治形態でない限り、個人の了解が必須である。コロナ禍で露呈した我が国のデジタル化の遅れの理由の一つもここになる。
そこで、「市民参加」というキーワードが、再び浮上してくる。わが国では「市民参加」というワードが出てくる時は、従来の(行政)手法が行き詰ったときに登場して来るという印象がある。

「主体的市民」という美しい言葉はあるが、間接民主主義の社会で、かつ、「シティづくりのためのデータ利活用」となると合意形成は容易ではない。市民にとっては「行政手続き」「医療・教育・福祉」「インフラ整備」など公的基礎サービスの課題とデータが直接結びつかないからである。

先行例としてよく知られている会津若松市の例は、先回のセミナーで市長自ら登壇して紹介。アクセンチュア中村氏の10年に渉るこの分野での挑戦とご苦労をさらにお聞きしたいものである。

最終目的としての「well-Being」は、"また横文字か"という印象である。
シンポの中で、「日本語は情緒的・非論理的」で定義があいまいという指摘があった。その点に関して異論はないが、我々日本人は「横文字」を持ってくるとその気になってしまう癖もある。スマートシティもその一つで、再生エネルギーや低炭素社会に向けてのムーブメントの折にも「スマート」という単語が用いられた。大変広範囲の意味に用いられている。
スマートシティ20210119900.jpg
余談だが、最近モビリティ分野で流行している「MaaS」も同じ傾向の使われ方である。何も目くじら立てることでもないが、「横文字」になってもできるだけ定義する努力が必要である。
「well-Being」という概念は1946年の世界保健機関 (WHO)憲章草案に用いられたことを今回初めて知った。前回、これから必要な取り組みの一つとして「価値観の提示、どんな『豊かさ』を実現させるのか」の検討が必要と提案していたが、今後具体的行政評価項目として利用されるような研究がさらに進められることを楽しみにしてフォローしたい。

●セッション5で、(株)NewStoriesの太田代表が述べられた「アーキテクトにとって大切な3つのこと」には大変共感を覚えた。特に「Not PoC祭り」は賛成だ。スマートシティ2021011983.jpgPoC((Proof of Concept:概念実証)とは、新たなアイデアやコンセプトの実現可能性やそれによって得られる効果などについて検証することと定義され社会実験ともほぼ同義語と理解されている。https://www.ntt.com/bizon/glossary/e-p/poc.html.

●中央官庁が地方から公募して実験実施に補助するという行政手法である。モビリティ分野でも、超小型電気自動車、自動運転、MaaSの社会実験が全国で行われている。「社会受容性」の機運醸成のために効果もあるが、実装に至るケースは少ない。予算のB/Cの観点からも従来の手法を見直す時期に来ていると思う。ここでは詳しくは述べないが、関係する産官学さらにNPOも自戒しないと、プロジェクトが"小さくチマチマ"と纏まり本当の意味の社会実装への合意形成が遠のく恐れもある。

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