
交通事故削減目標未達 「その2」ADASの可能性 |
[ Editor’s Column ITS/CASE&MaaS 政策動向 ] 2025年3月22日 |
1.交通安全基本計画と関連対策法
交通安全推進するための主な関連法規は内閣府所管の「交通安全基本法」警察庁所管の「道路交通法」
国土交通省所管の「道路運送車両法」である。
1-1 交通安全基本計画の目標値と実績
第11次 交通安全基本計画における死亡事故削減目標値未達の可能性大については、「その1」で既述した。
令和6年 内閣府発行の交通安全白書には、第1次から第11次計画の目標と実績表が掲載されている。それによると、直近の計画はほぼ目標未達であることに気づく。ただ、第11次計画では、実績値自体が、前年比 微増 微減状態になっている。
1-2 道交法、道路運送車両法の改定
交通安全対策は、道交法、道路運送車両法保安基準による法規制、安全施設整備、安全教育・意識徹底などの各方面から実施されている。
最近の「道路交通法、道路運送車両法保安基準」改定状況を表にまとめた。
それによると、道交法では、最近の交通事故データに基づき、高齢者、自転車、飲酒に関する対策・規制強化が行われている。
「道路運送車両法保安基準」では、「ADAS」関連装置の搭載義務化が制定されているのが分かる。
(最近の道路運送車両法 保安基準;道路交通法の改定項目)
2.ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems先進運転支援システム)への期待と課題
第11次計画では、計画期間において特に注視すべき事項の第2項として「先端技術導入への対応」を掲げている。
その中で、「先進技術の導入によりヒューマンエラー防止を図り、人手不足の解決にも寄与することが期待されるが、安全性の確保を前提として、社会的受容性の醸成を進めることが重要」と記述している。
2-1 ADASの概要
(ADAS一覧)
2-2 ADASの効果に関する調査研究例
ADASの交通事故削減効果に関する調査研究が各方面で行われている。
①国土交通省ASV推進検討会
・ADASを搭載した車両同士の場合、死傷事故の約69.6%が削減できると推定。
・衝突被害軽減ブレーキや車線維持支援システムなどのADAS機能が、特に追突事故や車線逸脱事故の防止に効果的と推定。
②戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
・SIPの研究では、ADASの普及率に応じた交通事故削減効果をシミュレーション、例えば、ADAS搭載車が全体の50%を占めた場合、交通事故全体の約30%が削減される可能性が示されている。
③自動車メーカーの実証実験
Google系のWaymoやGMのCruiseなどの自動運転車両のデータでは、手動運転車両と比較して衝突事故率が大幅に低下していることが示されている。
2-3 ADASの主な課題
①価格―高価―
(各社のADASの商品例 Chat Gptから作成)
②普及時間―現行の車両まで行きわたるには、10年以上の時間が必要になる。
(普及のイメージ図 SIP2資料を加工)
③ADAS,自動運転装置「認可基準」
先進技術の導入には「安全性の確保を前提として、社会的受容性の醸成を進めることが重要」と記述している。(前述)
{自動運転車の安全確保に関するガイドライン」は
自動運転に必要とされる安全性は、「自動運行装置が引き起こす人身事故であって合理的に予見される防止可能な事故が生じないこと」「自動運転車は有能で注意深い人間ドライバーと少なくとも同等に安全であること」と定義している。
3.第12期計画目標値
我が国の交通事故死者数は世界的に見ても急速に減少してきた。警察庁や内閣府は、次期計画に向け、関係機関・団体や専門家からの意見聴取や議論が進めている。しかし、近年のデータの傾向は、今までの施策の延長では限界に来ていることを示している。次期計画は、より「科学的かつ現実的目標」の設定が重要になる。