オートモーティブワールド2016②「AI(人工知能)は自動運転を革新させるか」 |
[ ITS/CASE&MaaS ITS海外情報 トヨタ 自動運転 ] 2016年1月28日 |
専門技術セミナーのうち「自動運転関連」では「ここまで来た自動運転 ~トヨタ・日産・ホンダの戦略~」「ADAS進化の鍵!最新センシング技術」「AI(人工知能)は自動運転を革新させるか」の3件で
講師はいずれも産学の専門家であった。
ここでは「AI(人工知能)」に関するセミナーの概要と周辺状況」ついてまとめる。セミナーでは3名が登壇した。
東京大学 松尾准教授は、
AIに関する研究の歴史をレビューした後、AIの変化が、今後、どのように社会や産業を変えるのか、AIの未来について解説した。なお同氏は昨年のCEDEC (Computer Entertainment Developers Conference)での基調講演とほぼ同じ内容で講演しておりこの分野の若手研究者として注目されている。
NVDIAエヌビディア シニア ソリューション アーキテクト馬路 徹氏は日立中央研究所、日立アメリカR&D、ルネサス・テクノロジー自動車応用技術部を経て現職に至っており業界の状況につき詳しい。
同氏は 自動運転システムは、1)認識処理、2)ローカル・ダイナミックマップ更新、経路生成、3)環境理解、高位判断、4)制御、5)HMIの機能で構成される。1)における画像認識へのDLよる革新に言及した後、同社の製品につき概説した。また同氏はCES2016に於いて同社のトップが発表した内容について言及した。
(株)DENSO IT LABO(デンソーアイティーラボラトリ)研究開発グループ チーフエンジニア 佐藤 育郎氏はDLよる実時間歩行者状態推定に関する研究発表で注目を集めている研究者である。
3氏の講演の骨子を順不同に箇条書きする。
1.AI研究の歴史1956年ダートマス会議以降60年間を1960年代、1980年代、現在の3段階分けて整理できる。1980年代は経産省が570億円の研究費を投じたが、実用化に至らず70年代、90年代と冬の時代を繰り返し現在が第3期である。
2.AIの最新動向、特にDL従来の研究とは非連続であり、人間が関与せずに「対象の特徴値を機械が学習」することが特色でカナダのトロント大学が2006年にDeep Learningの基本を提唱された。以降急速に発展し「2012年に映像認識のレベルが人間を超えた」
3.自動運転は①LIDAR、②カメラ画像、③GPS、の3つの入力データから、①アクセル、②ブレーキ、③ハンドル操作の3つの物理パラメータを決定する問題と言えるがAIが①②の判断に有効である。
AIが自動運転のコア技術の一つとして注目されている中で昨年トヨタは人工知能研究新会社Toyota Research Institute, Inc.(TRI)の設立を発表したが、CES2016に於いてその詳細を発表した。 http://newsroom.toyota.co.jp/jp/detail/10866787
TRIは今年1月、米国カリフォルニア州とマサチューセッツ州ケンブリッジにそれぞれ拠点を設ける。
参加メンバーは最高執行責任者(COO )に元DARPAプログラムマネジャーEric Krotkovを迎え、元ベル研究所部門長、元Googleロボティクス部門長、MIT教授等著名人を集めている。
また外部有識者からの助言を受けるための組織として、アドバイザリー・ボードを設置。ジョン・ルース議長(John Roos)元駐日アメリカ大使、ロドニー・ブルックス副議長(Rodney Brooks),元MITコンピューター科学・人工知能研究所 所長,iRobot創設者、現Rethink Robotics創設者・会長兼チーフ・テクノロジー・オフィサーマーク・ベニオフ(Marc Benioff)Salesforce.com CEO等々錚々たるメンバーを揃えた。
TRIの使命として、(1)交通事故の抑制、(2)高齢や身体の不自由によって運転できない人々に対する移動手段の提供、(3)ロボットなどの屋内モビリティにトヨタの技術を活用、(4)材料科学の研究、以上4点を挙げている。
日本企業ではNTT,リクルート、ドワンゴがAIの研究所を立ち挙げているが、交通関係ではトヨタが初となる。