ITS-P21レポート

AHSフォーラム報告


1
.基調講演 「世界に先行して開発したAHSの意義と期待」

       国土技術政策総合研究所ITS研究室 畠中室長


1996年から2002年までのAHS第㈵期開発、2003年から2008年までの第㈼期開発の歴史、又、SMARTWAY 2007での首都高における前方障害物情報サービスや合流支援サービス、2008年度大規模実証実験での、名古屋高速、阪神高速等に拡大した公道を使った実験の成果を発表された。さらに今後、三大都市圏等での運用、全国展開の計画、課題を述べられた。



2
.特別講演 「欧州『路車協調』の最前線と日本『AHS』への国際的な期待」

       ダイムラー シニアマネジャー マティアス・シュルツェ氏


ヨーロッパにおける車両通信の動向を述べられた後、ドイツ政府が資金提供して200810月から進めているフランクフルト市及び郊外でのフィールドテストの状況を具体的に説明された。


このプロジェクトでは、AudiBMWDaimlerBosh等とフランクフルト市が組み、スピードアドバイザー、障害物ウォーニング、交通渋滞ウォーニング等のアプリケーションが公道を使いテストされる。



3
.パネルディスカッション


シンポジウム最後にパネルディスカッションがあり、赤羽千葉工大教授をモデレーターに、畠中室長(上記)、カーライフ・エッセイスト 吉田由美氏、トヨタ自動車ITITS企画部 天野室長、NEC交通・公共ネットワーク事業部 雨宮部長がパネリストとして、本格運用開始への第一歩を踏み出すAHSの意義と今後の期待について討議された。


ITS世界会議2008ニューヨークにて
河野理事長とマイセナー教授

4.他


尚、シンポジウムに出席していた、旧知で、又ITS世界会議2008ニューヨークで河野理事長に紹介した、UCバークレー Jim Meisener教授(VIIプロジェクト推進者の一人)と休憩時間に挨拶した。


又、上記発表者シュルツェ氏にインタビューしたところ、彼の上司はメツェラー氏であることがわかった。

19963月筆者は一人シュツットガルトのダイムラーベンツ本社を訪れ、彼と自動運転について技術討議を行い、又自動運転試験車 VITA ㈼(ベンツSクラス改造車)に乗せてもらうことができた。彼の運転でアウトバーンに入り、100km/h以上のスピードでハンドルから手を放すと、レーンの白線を認識し自動走行し、ターンレバーを押すと、車両前方、後方、横のカメラが周囲の車両を認識し、自動的に安全確認後スムーズにレーンチェンジし感銘を受けた。

テストとして走行できても、技術的な課題もあり、又、事故が起こった際の責任の所在、ドライバーがかえって注意散漫になる等、実用化には大きな問題があることで意見一致した。彼は、トラックの連帯走行の方が実用化が早いとの個人的見解を示した。


1996年はたまたまAHS開発初年度であることを知り、自動運転、安全運転支援の取り組みの歴史の長さを改めて知り、AHSが公道を使った実証実験にまで至り、フランクフルトでも同様の公道テストが開催されようとしていて、いよいよ実用化されることに感慨深い。


文責:ITS-P21 野村一志